新潟ブレスト検診センター

新潟県の女性を5歳別に分けて乳がん発生数の棒グラフにしてみました。(図1)
ただ、このマンモグラフィも約5%は見落としがあるため、それを補うために当分の間は視触診を追加することになっています。しかし、この視触診の精度は大変低いため、現在、超音波検査を検討しています。超音波検査は診断機器としては大変実力がありますが、検査する医師や技師の技量に左右されるところが大きく、国際的には残念ながら検診検査としては認められていません。
大きな胸の人が多い欧米人が考え出したマンモグラフィですから、当然大きい胸はきれいに写ります。でも、薄い胸の人でも技師や機器も認定資格を持っている施設で撮ればきれいに写るので心配はいりません。
乳がんでは2.0cm以下のしこりを早期がんと定義しています。偶然に発見されたしこりの大きさは平均で2.0cmを超えています。しかし、意識して定期的に自己触診を行っていて発見されたしこりはほとんどが2.0cm未満です。
(図3)は、巨大な乳房の人の超音波像です。それでも底膚から大胸筋の間はわずか2cmです。この中に2cmの堅いものがあればわからないはずはないですよね。
リスクファクターは、研究者によって少しずつ異なります。しかし、どの報告も「ライフスタイル」「遺伝因子」「肥満」の三つを大きなファクターとして挙げています。新潟県立がんセンターのデータも入っている研究結果を一例として挙げておきます。(図4)
乳がんだけに限定してしまうと動物性脂肪、乳製品などが以前からリスクファクターに挙げられていますが、そのために日常の食品を偏って摂取すと別のがんを生む原因を作ることになります。
マンモグラフィで指摘される石灰化像というのは乳房のなかにたまった石灰が写っていることです。この石灰はいろいろな原因でたまってきますが、その原因の一つに乳がんによる場合があります。そのためか知識が先行して「石灰化像=乳がん」と決めつけてしまう人がいます。
確かに女性の乳房は性周期によって変化しますが、感覚的な要素の方が大きいと思います。おもに視触診検診や自己触診のような五感に頼る場合は、生理の前を避けた方がよいとされてきました。この時期は圧迫により、痛みを覚える人か多く、この時期を避けることが常識的になってしまいました。これら張る感じや痛みの原因は、生理の直前に現れる乳腺の浮腫、つまりムクミが原因です。
自己触診のことをいっているのだと思いますが、以前は自己検診といっていました。これは視触診をはじめ、現在の検査方法が完璧なものとはいえず、これらを補完する意味で検診という言葉を使っていました。
自分でしこりに気づくには二通りあります。一つは偶然に触れて気づく場合と、自己触診を励行していて発見する場合です。偶然発見乳がんの大きさは平均2.0cm以上です。2.0cm以下が病期1なので、病期2に入ります。
乳腺症ががんの一歩手前で、いずれはがんになる可能性が高いという知識はもう30年前のことで、20年以上前から乳腺症は「病気」ではなく、生理的な「変化」と解釈されています。つまり、乳腺症は乳房の老化現象、更年期ともいってよいと思います。乳房の痛みは、乳腺症の中で最も多い症状です。ただ、乳腺症と乳がんの発生する年齢が日本では似かよっているので、ややこしくなります。
乳がんは、がんの中でもユックリ進むタイプのがんに入ります。もちろん、進行の早いタイプもありますが、それは特殊なもので一般的ではなく、参考にはなりません。強いていえば、高齢者と比較すれぱ、若い人の中に進行が早いタイプが多いといえます。
被曝が少ないマンモグラフィのことですから、毎年受けられれば、もちろん、受けた方が良いと思います。しかし、経費と効果のバランスつまり、費用対効果から国も研究の結果、住民検診は隔年で大丈夫ということにしています。外国でも2年に一回、3年に一回などのデータで成績を出しています。
このような場合のほとんどは乳瘤といって、乳汁のたまりによるシコリです。授乳中は乳房全体に乳汁をふくむ小葉が、乳腺内に所狭しと詰まっているので、マンモグラフィでは細かな病変は描出することができません。
ともにホルモンに関係が深い疾患なので、このような質問が出るのだと思います。ホルモンに関しては、甲状腺が成長ホルモンなのに対して、性ホルモンに依存する乳がんには、直接は関係かないのです。
以前は女性の乳がん100人に男性の乳がんは1人の割合でした。ところが最近は女性の発生率が急激に伸びたため、日本乳癌学会の登録では男性対女性の比は1対200と報告されています。つまり、男性の発生率は変わらないのに、女性の発生率が倍になったとも言えます。
がんの治療には、手術のほかに放射線治療や薬物治療などがありますが、残念ながら、現在の医学では手術が最もきれいに取り除ける可能性がある治療法です。
マスコミなどで、乳がんの若年傾向が報道されていますが、発生数は35歳から50歳未満の若年者層は若干の増加にとどまるのに対して、51歳以上の年齢層の増加が顕著になり、欧米型になっていくと思います。